某質問掲示板によくあるのが、自己推薦文が書けないので誰か書いてくれという質問だ。実際、下書きのものを見ると、本当に書けていない。プロの技が要求されているわけでもないのに、そんなに文章書くのは大変なものなのか、と不思議な感じもしたのだか、
進研ゼミの小学二年生のコースに、おはなしを作る国語の問題があった。
創作力、表現力を付ける…という感じの課題なのだろうか。小学校二年でこういうことを学んでいるというのは興味深い。作文の技術はこの年代から始まっているのである。このあたりで躓いたら、高校入試、大学入試で落ちるという壮大な罠のようだ。
問題には、りすとたぬきがケーキを前にして PostPet みたいな感じの部屋の中に座っているところが描かれている。これを見て、エンディングを考えて文章を作るという課題だ。
面白そうなのでその絵にあわせたお話を書いてみた。
小学校二年生ではなくいい大人の落ちぶれテクニカルフリーライターが書いたらこうなるという話。模範解答でも何でもないのでそこのところ、よろしく。猫物語を読んだ後に書いたから、ボケツッコミとか多少影響したような気がする。
りすとたぬきの名前は好きにしていいというので、りすの名前は「ロドゲリス」、たぬきの名前は「鈴木ジミーぽん吉」にした。漢字とか小学校二年生縛りにするのは面倒すぎるので限定解除で書く。
*
ロドゲリスと鈴木ジミーぽん吉は、ジミーの部屋で作った栗のケーキを食べることにしました。なかなかうまくできた感じがします。
「さっそく食べようポン」
「おっと、飲み物がないね、ジュースを取ってくるから少し待ってて、ジミーくん」
「どこか分かるポン?」
「勝手知りたる他狸の家だよ、まかせとけって」
ロドゲリスがジュースを取りにいっている間、ジミーは待ちきれません。我慢できずに一口食べるのと、ロドゲリスがジュースを持ってやってくるのが同時でした。
ジミーがケーキを食べると一瞬動きが止まって、すぐに顔が青くなりました。ソレを見て、
「どうしたんだい、ジミーくん?」
「…」
「何かおかしなことでもあったかい??」
「ねえ、ロドゲリスくん、このケーキはどうやって味付けしたポン?」
「味付けかい、僕はハーブ派なんだけど、栗のケーキだから木の実テイストにしてみたんだ。ベースはどんぐりと、松ぼっくりと、くるみと、銀杏かな」
「砂糖は入れたポン?」
「ううん、甘いものを取りすぎると体によくないっていうから」
そこか。
「でもさ、甘くないケーキというのはちょっとアレなんじゃないポン?」
「そうかな、アレじゃなくてレアなら同意するけど、カレー味のケーキとかいけると思わない?」
ケーキのレアというのはちょっと違う意味のような気もするけど、それにしてもリスがカレー食うのか。ジミーがポケットを探ると、たまたまたけのこの里があったので、それを口に放り込みました。
「まあいいポン。薄味のケーキだと思えばフレッシュで見も心も引き締まるポン」
「だよねー」
とにかくジミーはおなかがすいていたのでこれで良しとすることにしました。
ノックの音がした。
「はい、開いてますよポン」
「ちわぁ、N○Kです、受信料のご確認にきましたっ」
しかしジミーの部屋にはテレビはありません。
「うちはテレビないから受信料払ってないポン」
「受信料は、N○Kが受信できる装置があれば、見てなくても支払う義務があるんですよ。法律でも決まっています。これがパンフレットです。契約する義務だってあるんです。契約しなくても罰則はありませんが、それは説明しないことになっています」
「いや、テレビを見ていないんじゃなくて、だからそのテレビがないポン。挿絵を見れば分かるポン」
「受信料のお支払は、口座引き落としにするのがお得ですよ」
こいつら話がかみ合ってないなと思いつつ、ロドゲリスが口を挟むことにしました。
「まあまあ、N○Kのきつねさん、」
「俺はキツネだったのかコン」
「とにかくおあがりなさい、美・味・し・い・ケーキがあるのでご馳走しますよ♪」
「その言い方に作為を感じるし、何となくツル美ちゃんにスープをもらった時のことを思い出したりするのだけど、遠慮する性格ではないのでありがたくいただくコン」
N○Kのきつねさんはさっさと開いた椅子に座って、差し出されたケーキを一口食べました。
一瞬の間があいた後、キツネの顔が上から下に向かって青くなっていきました。
「そんなのは映像効果だポン。テレビじゃあるまいし実際にあるわけないポン」
「どうしました、きつねさん?」
「コンコン、あ、急に用事を思い出しました、またお暇な時間にきますので、すみませんがよろしくコンコンコンコン」
N○Kのキツネどん【誰】は咳き込みながらそう言うと、ドアをバタンと閉めてさっさと帰ってしまいました。
「せわしない人だポン。といいつつ、実は反則技でこの携帯にはワンセグが付いてるポン」
「まあいいけどね。それより美味しいケーキを食べよう」
「だからその美味しいというのはちょっと語弊があるというか、まあいいポン」
ロドゲリスが一口ケーキを食べて、サクっと噛んだところで、動きが止まりました。
「どうしたポン?」
「何かこのケーキ、もさもさした食感がするんだけど、ジミーくん、何か入れたかい?」
「もさもさポン、あーもしかして天カスのことかなポン?」
「何でケーキに天カスを添加するんだよ!?」
「オヤジギャグごくろうさまポン。そりゃもうたぬきといえば天カスに決まっているポン」
「関西じゃたぬきというのは揚げの入ったソバのことなんだけどさ、それはともかく天カスをケーキに入れないでよ、リスは歯が硬いんだからふにゃふにゃしたものに弱いんだよ!」
「その割にケーキ食うというのが理解できないポン?」
ロドゲリスがジュースを一口飲んでいる間に、ジミーが次の一口を食べたらゴキッという音がして、またまた動きが止まってジミーの顔が真っ青になってしまいました。
「どうしたんだ、ジミーくん?」
「すごく硬いものが入っていたポン…」
くるみでした。丸ごと、殻が付いたままでした。くるみは漢字で書くと胡桃、桃という字が入っているのですよ。面白いですね。
「面白くないポン。なぜ殻の付いたまま入れたポン?」
「クルミって普通そのままかじるんじゃない? 歯を伸ばしすぎないという効果もあるしさ」
「それはリスだけだポン。普通は殻を割って中に入っているやわらかいところだけ入れるんだポン。おかげでアゴの骨がずれたような気がするポン」
「そうか、それは細かいところまで気付かなかったってことで、ごめんジミーくん。ていうかそんなでかいものは口に入れる前に気付けよ」
「細かくないポン。まーでもいいポン」
性格のおおらかなジミーが歯が欠けずに済んでよかったとか言っている間にロドゲリスが次の一口を食べて、しばらくたつと動きがピタっと止まって、だんだん顔が赤くなってきました。
「ど、どうしたポン? さっきまでと様子が全然違う、って思わず説明的にしゃべってしまったポン??」
「ぐ、ぐ、ぐ」
ロドゲリスは声がうまく出せません。
「み、み、みず~……」
「呼んだァ?!!!」
ドアを蹴破って入ってきたのはミミズのニョロ子ちゃんです。
「お前は呼んでない。ていうか足がないのにどうやってドアを蹴破った?」
「あら、お呼びでない? お呼びでない! こりゃまた失礼しましたァ~」
そんなギャグを知っている小学生はいない。何とかジュースを飲んで一息ついたロドゲリスがジミーの胸倉を掴んで言いました。
「ジミー、貴様何を入れた?」
「闇鍋じゃないんだから何と言われてもアレだが、どんなものが入っていたポン?」
「何かすごくモチモチっとして、飲み込みにくいというか、」
「あー、それは○○ゼリーだポン!」
「うおお○○ゼリーはここで使っちゃヤバいだろ?」
「伏せ字にしとけば分からないポン。サービスで丸ごと入れたポン」
「切ってから入れろ、ていうか栗のケーキに○○ゼリーを入れるバカがどこにいるんだよ。裁判しても勝てないよ」
「食感がお楽しみになるポン」
「楽しいどころか死ぬかと思ったよ!」
「天国と地獄だポン。噛まずに食べるからだポン。それにしても、ロドゲリスくんは強運だポン」
「ジミーくんって、もしかしてカチカチ山とか出演していない?」
「それはまだ未体験の大役ポン。いずれは挑戦してみたいポン」
「まあやめた方がいいかも…」
といっている時に、なんということでしょう。ズシッという振動が。
「なんだポン? 妖魔?」
「古すぎるよ、ていうか何で猫物語を読んだ後で妖魔なんだよ、それを言うなら怪異だろ!」
アッという間に激しいたて揺れが始まりました。
「大地震だ、予告の放送もなしだ!」
「テレビがないってさっき言ったポン」
「ワンセグがあるんじゃないか?」
「電波が入らないポン!」
「そんなオチなのか、うわわ、ジミーくん、危ないっ、とにかくテーブルの下に隠れるんだ」
「合点だポン!」
二人はすぐにテーブルの下に隠れました。しかしこの縦ゆれが強烈なので、高さがあまりないテーブルの下に頭をゴツんと激突したかと思えば、反動で床に体が叩き付けられて、また反動で頭がテーブルに、というこで最悪パターンです。
「ポンポンポン~!」
といってるうちに縦ゆれがおさまって、今度は大きな横揺れがやってきました。
「リスリス~」
「ポンポン~」
二人は開いていたドアの外に飛び出してしまいました。でも周囲には何もない広場なんですから、最初から外に出ていればよかったのですよね。
「それを先に言えポン」
「あーすごい地震だった」
「あ、そういえばロドゲリスくん、これはチャンスではないかポン?」
「えっ、何のチャンスだい、ジミー?」
「こんなに揺れたのだから、きっと栗がたくさん落ちているポン」
「そうか、さっき栗を落とすのに結構苦労したもんね」
「血だらけになったポン」
「その話は省略したから読者は理解できない」
「まあそれはそうとして、先取りされないうちに、早く拾いに行くポン」
「よしきた、ジミーくん、そうしよう」
二人は急いで栗を拾いにいって、トラック3台分の栗を集めて持って帰ってきました。その後、毎日栗ケーキを食べることになってさらなる大騒ぎになったのは言うまでもありません。
おしまい。
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