二次方程式が実生活で何の役に立つのだという人は単に自分が役に立つ使い方を知らないだけなのだが
自分が分からないものは誰にも分からないと思っている人は非常に多いようだが、数学は特にその典型的なもので、極端な話、九九は何の役に立つのだというような人だっていますね。確かに電卓があれば掛け算ができるから、九九は知らなくても大丈夫だし、掛け算が出来なくても実生活は可能だから、必要不可欠なものではないことは間違いない。
ただ、九九すら覚えられないような記憶力で社会の戦いに勝ち残れるのかとか、あるいは生活に必須でなくても使えば便利なシーンがあるのに、単に損していることを気付いていないだけではないか、とか。
chat で二次方程式が実生活の何に役に立つのかという話題が出たのだが、そういう感覚を持っている人は、単に二次方程式を役に立てる能力がないだけだろう。仕事上、二次方程式とか、それ以上のものを普段から使っている人は別として、普段生活しているときに二次方程式を使うことはそんなにないと思うかもしれないが、例えば物理運動は等加速度運動だから、距離や速度を知りたいときにはすぐに二次方程式が出てくる。
例えばブレーキをかけて10m以内で止まるためには、車を何km以内で走らせる必要があるか。
一見簡単な二次方程式になるのだが、実は簡単ではない。加速度が分からないと計算できないのだ。しかも、実際に運転しているときに二次方程式を解く余裕はない。ただ、二次方程式のグラフを知っていれば、倍になったら4倍、3倍になったら9倍、というようなイメージが分かりやすいかもしれない。これは実生活上も結構重要なことで、無意識のうちに使っている人も多いかもしれない。
もっとも、スピードが倍になったら破壊力は4倍だとしても、死亡率も4倍になるかといったら、そういうのは二次方程式では解けない。
まあそういう話はおいといて、二次方程式を学校で教えるとどういうメリットがあるかというと、私見としては、国語の文章読解力が向上すると思っている。もちろん、解の公式を丸暗記しただけではダメで、どうやって公式を導出するのか、というようなロジカルな所を理解する必要があるが、大原則として、算数や数学の考える問題は、ロジカルシンキングの基礎力を付けるのに最適で、これは即ち国語の文章読解力のベースになるスキルなのである。
また、証明問題なんてのは、AだからB、というようなロジックを組み合わせて解答を書かせるのだが、そのような思考・発想が持てるということは、文章作成能力にも影響してくる。さらに、抽象化や一般化のような手法もそうだ。つまり、数学は国語と密接に関係しているのである。
てなわけで実生活に役に立ちそうな問題。
問題: 高さ50mの高層マンションの屋上から、水平方向に1m/秒の速度で飛び降りたら、マンションから何m離れた位置にいる人と激突するか?
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コメント
回答案その1:
n/a
(sqrt(50*2/9.8)≒3.19だけど、3.19m先には誰もいなかったので、誰とも激突しなかった)
回答案その2:
0m
(飛び降りた所が屋上のエレベータタワーの上で、飛び降りた先は屋上。エレベータータワーの真下にいた人にぶつかった)
回答案その3:
2m
(問題の高層マンションの2m隣に高さ30mのマンションが建っていて、その屋上にいる人にぶつかった)
回答案その4:
6m
(実はこの高層マンションは月に建っていた)
回答案その5:
1244m
(飛び降りた時に1244m先にいた人が自転に取り残されてしまって3.19秒後にはマンションの下3.19mの地点までやって来ていた。ただし該当の高層マンションは日本と同緯度とし自転速度を1400km/hと仮定)
投稿: <セルダン> | 2008.02.18 19:14
「実生活で何の役に立つ」という疑問の立て方はよく耳にするのですが、実生活ってのがどういうものなのかは人によって異なる、と私は思っています。事故の原因を物理学的に説明している記事を読んだときに自分で納得しないと気がすまないという“実生活”を送っている人もいるだろうし、ああそうかと鵜呑みにしてしまう“実生活”の人もいるだろうし。
> 例えばブレーキをかけて10m以内で止まるためには、車を何km以内で走らせる必要があるか。
> ただ、二次方程式のグラフを知っていれば、倍になったら4倍、3倍になったら9倍、というようなイメージが分かりやすいかもしれない。
どちらにも読めるので確認ですが、速度は距離の平方根に比例ですよね?
投稿: すのもの | 2008.02.20 01:03
論理が大切という意見にはもちろん賛成ですが、正反対のことも言えると思います。それは、「自分流に考えないで、教わったとおりにやる」ということです。一度論理をきちんと理解したら、とにかく、先生に言われたとおり、教科書にあるとおり解いてみる。そうすれば必ず正解に達します。勝手に自己流に走ると失敗します。算数・数学にはそういう面もあって、「言われたとおりに処理できるかどうか」の能力を見る科目でもあると私は思っています。
あと、数学者の中にときどきある意見は、優れた数学の理論は、過去の芸術作品を味わうのと同じように、すべての人が味わうべきだ、というものです。平面幾何の論証にはそういう面もあるかと思います。
投稿: すのもの | 2008.02.20 01:16
確かマトリックスなら向こうのビルまで飛べたはずです。マトリックスといっても行列ではなくてスミスが出てくる方ですが。
> 事故の原因を物理学的に説明している記事を読んだとき
殆どの事故はなぜだか「確率的にあり得ない」と考えられているようです。確率的にあり得ないこがありふれているというのが現実で、あるいは世の中ランダムではなく神の意思が存在するとか。
> 一度論理をきちんと理解したら、とにかく、先生に言われたとおり、教科書にあるとおり解いてみる。
ロジックよりアルゴリズムの模倣的トレーニングというような感じがしますが、プログラミングの世界でも実は「言われた通り」というのが非常に重要なのですが、どうしようもなく自己流な人が多いというか、教科書というほど確立した解き方がないのがプログラミングかも。
ある程度勘のいい人なら、なぜか分からないけど動くプログラムが書けたりしますが、数学でも似たような感じがしたことがあったような気がします。証明は合っているらしいのだけど自分で解いている意味が分からない。
投稿: phinloda | 2008.02.22 04:55