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書評:学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話


今話題の本の紹介。
最初に言っておくが、
この本の「さやかちゃん」はかなり頭がいい


さやかちゃんが塾に来たときの偏差値は30以下で、慶應合格ラインは70。
つまり40上げる必要がある。
これは、

市民ランナーがオリンピックで金メダルを取ろうと言っているのに近い


(p.117)


普通有り得ないような話なのだ。
勉強を始めた頃の描写が興味深い。
聖徳太子を「せいとくたこ」と読んでしまう。
そして、きっと超デブだったからこんな名前付けられたというのだが、このような発想で頭がいいことがよく分かる。
普通の人は読めない漢字は読まずに「分からない」「読めない」で済ませてしまうものだが、
さやかちゃんは無茶苦茶でもいいからとにかく読んでしまう。
しかも理由まで考えている。
「太」からデブを連想したのはデタラメではなくて合理的だ。
ちゃんと論理的思考ができるのである。


コーランは何語で書かれているかという質問をしたら、

「1万5千語」(正解はアラビア語)」


(p.102)


コーランは何語でという質問に文字数を答えるという発想もヘンだけど、見落としてはいけないのは、1万5千という数字を出すところだ。
これが凄い。
「世界にピアノの調律師は何人いるか」というマイクロソフトの面接問題が有名だが、このような質問をされても普通は数字が出てこないものだ。
さやかちゃんは何か理由があって1万5千という数字を出した。全然違うんだけど。本当は約7万8千語らしい。


こんな感じで、普通なら思考放棄するようなことを、とにかく考えまくる。
これは頭のいい人の特徴だ。


この本をうっかり読むとおバカ女子高生みたいに誤解するかもしれないが、どんなに頭がよくても勉強しなかったら問題が解けないのは当たり前のことなのだ。
だから、頭が良くない人は、これを真似しても1年で偏差値を40上げることはできない。
安易に真似すると大怪我しそうだ。


最初に紹介したように、受験はよく長距離走にたとえられる。
昔から定番の比喩で、私もよく使う。
低いレベルの高校から国立大を目指すのは、マラソンで足の遅い人がスタートに出遅れて鉄下駄を履いて走るようなものなのだ。
さやかちゃんの場合は

50メートルを10秒で走っている子に、5秒で受かれば受かるよ、だから走りなさい、と言うのと同じ


(p.120)


この微妙な設定が面白い。
100メートルを10秒未満で走る人間がいるのだから、原理的には50メートルを5秒で走ることは可能である。
ただし、スタートから加速する時間が必要になるので、50メートル走の世界記録は5秒5程度らしい。
100mを10秒未満で走れるのは後半が速いのだ。
だから、後半だけの走りをすれば、5秒は切れる。


ではどんな勉強をすればいいのか。
古来から、学校の授業はまず教科書、理解してから問題を解いて確認という順序だし、問題を解くときには考える。
考えて分からないとヒントをもらって考える。
しかし、これではスピードは出ない。
だから、坪田氏のすすめる勉強法は問題集ベースだ。

基本、参考書ベースではなく、問題集ベースでやることが大切です。なぜなら「入試」は問題集ベースですから。参考書はあくまで「参考」程度。問題が解けない場合だけ解説を見て「解き方を覚える」。そして、とにかく「解いてみる」。これで十分なのです。


(p.129)


極端な話、まず何も分からない状態で問題集をやれという人もいる位だ。(弁護士が書いた究極の勉強法、木山 泰嗣) 


てな感じで、この本には、勉強法についてもいろいろ書いてあるので、受験生の人にもおすすめなのである。
個人的にいいと思ったのはコレ。

調べた英単語に線を引く


(p.150)


高校生の時にやったことがあるから。
実はその辞書を長年探しているのだが、なかなか出てきてくれない。


学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話

坪田信貴著

KADOKAWA/アスキー・メディアワークス


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