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渋谷駅の事件で親の顔を見てみたいと思った理由

先月、渋谷駅で(とはいっても、渋谷駅は意外とたくさんあるのでどの渋谷駅か書くべきなのかもしれないが)乗客トラブルでサバイバルナイフで人が刺されるという事件があった。

この種の事件があるとよくある報道パターンだが、「おとなしい人」「事件を起こすようには見えない」といった近所の人のインタビューが出てくる。実際、MSN産経ニュースに出ていた大家さんのコメントは「おとなしくて人を刺すような人には見えなかった」だった。

ただし、アパートの階下の人が「切れやすい」と思ったとコメントしているのは興味深い。

【渋谷地下鉄殺人未遂】「おとなしい」「神経質そう」…近隣住民とトラブルも 逮捕の渡辺容疑者+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

こういう事件が起こったら親の顔が見てみたいと思うことがあるが、今回もそうだ。ただ、多分ここで終わったら殆どの人が誤解すると思うので説明する。

ボルヘスの書いた創造者という本の中の、まさに「創造者」という短編の中で、ある少年が他の少年に侮辱されたことを父に語るシーンがある。父はそれを適当に聞いた後に少年に短刀を渡して、

「お前が男だということを、相手に思い知らせてやれ」

(創造者 J.L.ボルヘス、鼓直 訳、岩波文庫 p.17)

少年は侮辱した少年を刺しに行く。

渋谷の事件に戻ると、この報道では単に被害者とぶつかったとなっている。しかし、単にぶつかっただけではなかろう。渋谷駅を実際に歩けば分かるが、そんなことで人を刺していたら、百人の死者が出ていたはずだ。あそこは人がとても多い所なのである。

他の報道では、容疑者は被害者を刺す前に男性と口論になっていて、その後にエスカレーターに乗った男性を追いかけて刺したことになっている。

【渋谷地下鉄殺人未遂】「体ぶつかり腹立った」 サバイバルナイフで刺す 32歳容疑者逮捕 - MSN産経ニュース

東京で、知らない客同士で口論になることは滅多にない。基本は「我関せず」だ。口論になっても、酔ってたりしなければ、大抵は何とかおさまる。

体がぶつかったので腹が立って刺すのなら、最初に口論している場所で刺しているはずだ。口論のときに容疑者が何と言われたのかは分からないのだが、もしこの事件においてもある意味常識が働いているのだとしたら、よほどものすごいことを言われなければ、刺そうというような結論は出ないだろう。だから、後から追いかけて刺すというのは、口論のときに侮辱されたのが捨て置けなかったのではないかと想像するのである。しかし何か言われた位で人を刺したりするものだろうか?

では、人間は侮辱されたときにどうするか。ボルヘスの話に出てくる父親はそれに一つの解を与えている。容疑者はサバイバルナイフを護身用だと説明している。護身というのは守ることが目的であることを示す。では一体何を守ろうとしたのか。

容疑者の親に訊けばそういうことが何となく分かるような気がしたのだ。


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