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書評: ザ・ロード

親子が延々と南に向かって旅をする。それだけのストーリーだ。巻末の訳者あとがきの所に、子連れ狼を連想させるという話が出てくる。子連れ狼の二人はストーリー中では善人であり、ハメられた立場だが、復讐のために刺客となり、幕府に逆らうことで悪人となることを辞さない。共通点は、何が何でもやろうとするしぶとさである。

よし、善い者というのはこうなんだ。いろいろ試してみる。絶対に諦めない。

(p.157)

善悪の基準に「諦めない」という言葉が出てくるのが面白い。

この物語の世界は無法地帯、弱肉強食だ。アニメだったらバッサバッサと敵を斬りまくったり、謎の超能力を使って一撃で全滅させるのだが、ザ・ロードの描写はSFであるにも関わらず随分リアルだ。何が起こったかは全く出てこない。読者に勝手に想像しろというのだ。普通の人の感覚だと、核戦争でも起こって全世界がほぼ全滅、のような妄想をするのだろう。私も普通の人だから、まあそんな所だな。どこかの原発が…みたいなことは思いも寄らなかった。

少し読めば、だいたいどういうことが起こるのかは想像が付く。想像できるけど、本当にそうなるのかとワクワクしながら読み続けてしまう。そして、結局最後どうなるのかは、なかなか想像できない。そこが面白い。

キーワードが二つ出てくる。一つは最初に紹介した「善い者」だ。法が通用しない世界における善悪とは何なのか。人間の社会は基本的に法によって善悪を判断する。この親子は勝手に人の家に入って物を持ち出す。それは良い事だという。ここにいた人もそれを望んでいるはずだ。

ところが一番無茶苦茶してもよさそうな子供が、それに疑問を感じている。それは本当にいいことなのか。

もう一つのキーワードは「火を運ぶ」だ。これに関して私は解説に書いてあることを鵜呑みにするしかない。

おじさんは火を運んでる?
なんだって?

(p.328)

聖火の話が紹介されている。実際に carry the fire をググってみたが、ザ・ロード関連のページがたくさん出てきた。案外、この言い回しを流行らせているのはこの本自身なのかもしれない。

青い鳥に出てくるチルチル・ミチルはダイヤモンドのついた帽子を被っているが、光というのは真理とか正しいものを象徴している。火も同じような役割を持っているが、便利だというだけでなく、危険な顔も持っている。それを運ぶというのは人生そして人類全てを象徴している。

ザ・ロード
コーマック・マッカーシー 著
黒原敏行 訳
\840, ISBN:4151200606 978-4151200601

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