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書評: もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら


質問系の掲示板に「勉強は何のためにするのか」という定番の質問がある。
小学生にその答に沿った行動をしろというのは無茶だが、中学生、高校生になってまだ考えているというのはちょっと困る。
先日はこの質問をしていた人が大学入試に失敗したという話を書いたのだが、
入試のためという目的は、モチベーションとしてはやや弱いのかもしれない。


もう一つよくある質問は、微分・積分は実生活上で何の役に立つのか、というものである。
実生活では役に立たないという回答を確定している人は多いかもしれない。


しかし、この回答は不正解である。


つまり、微分・積分が役に立たないということはない。
その人が実生活に微分・積分を役立たせるだけの能力がないというのが真実なのだ。
ま、そちらの視点から見れば正解といっても間違いではないが。


実際、殆どあらゆることは、役に立つように使えば役に立つものである。
そのためには、知識をどうやって使うかを知らなければならない。
残念ながら、その最も重要なところを学校ではあまり教えてくれない。
あらゆる科目に関して、試験問題を解くような方向のスキルは磨いてくれるけど、それを人生の中でどうやって使えばよいかを学校ではあまり教えてくれないのだ。


あるいは教えられないのかもしれない。
そんなことは各人が考えて決めることであって、どうすればいいとかいう決まった回答はないのである。
だから、生徒達は、それを入試の点を上げるという役に立つ、という非常に限定的で非本質的なところで理解せざるを得ないことなる。


この本は、ドラッカーという経営学者のマネージメントの理論を高校野球に応用するという、
あまり聞いたことのないテーマで書かれている。
しかし、内容は簡単に言ってしまえば単なる青春物語である。
だから、普通に青春小説を読みたい人が読めばいい。


間違ってもこの本を読めばマネージメントのノウハウが身に付くとか思わない方がいい。
フィクションはどこまでいってもフィクションである。
身に付かない。
ただし、全然役に立たないかというと、さっきも書いたような気がするけど、それが役に立つかどうかは、その人に役立てるスキルがあるかどうかである。
至る所にマネージメントの話が出てくるから、そういう所を頭に叩き込む人がいたら実際役立つかもしれないのだが、だったらこの本ではなくてドラッカーの本を読んだ方がいいんじゃないかと思う。


野球を一体どうマネージメントするのか、
まず高校野球における顧客とは何か悩むという所が面白い。

顧客が野球部に求めていたものは『感動』だったのよ!


(p.56)


それ経営学じゃないような気もするが…。
まあでも高校野球はともかく、
プロ野球にはイノベーションが必要かもしれんな。


ともあれ、この本は、意表を突く分野にマネージメントの理論をどう当てはめるかという視点で読むといい。
つまりそれは、勉強をどう実生活に応用するかというのと同じテーマである。
ドラッカーのマネージメントを野球部に適用するのは、微分積分を日常生活に役立てるのと、アプローチとしては同じことだ。


本来そこに必要なのは柔軟な適応能力なのだが、この物語に出てくるヒロインのみなみちゃんは、
あまりそれをうまく適応させることができない。
そういったジタバタも面白いといえば面白いのだが、トラウマまで伏線になっている割に、なぜそうするか、というツメのところが、小説だから当たり前ではあるが、ちょっとご都合主義になっていたりするのだが、
まあその分、安心して読めるという考え方もあるのではないかと思う。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海 著

ダイヤモンド社

ISBN978-4-478-01203-1

C0034 \1600E

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