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ネットで実名を出したいサラリーマンの皆さんは住所電話番号をお忘れなく

実名論争というのは、もう20年ほど前にあった話で、当時の netnews とか、パソコン通信だとか、そこで大体出尽くしていて、最近のインターネットの論争を見てると、当時と同じことをリプレイしているだけだ。何も新しいことがない。インターネットの方が、より浅く薄い関係が成立するのだから、そこに特化した別の結論が出てきてもおかしくないのだが、それも出てこない。

今回は「ネットで実名を出せないサラリーマンの皆さんへ」を見て思ったことを書きたい。

ネットで実名を出せという主張の根っこには、実名でないと信用できないという意見があった。これは裏を返せば、実名だとおかしなことはできないだろう、つまり仮名や匿名だと嘘を書いたり違法行為もするだろう、ということである。

私はそんなことはないと考えていたので、当時(1988年)、とあるところでプログラマーズフォーラムというプログラミング専門の人を対象にしたコミュニティを立ち上げる時に、実名不要、原則はハンドル(仮名)というスタンスでローカルルールを作った。当時のコミュニティは原則実名、場合によっては実名必須だったから、これはかなり大胆で異端だったのである。

その結果、投稿は嘘のものやいいかげんなものが増えたか、荒らしや違法行為が増えたのか? 今はそのサービス自体が消滅しているので皆さんは検証できないだろうから好きに書いてしまうと、全くそんなことはなく、むしろ高度な内容、荒らしのいない安心して使える平和なコミュニティ、が実現できたのである。匿名だからデタラメを書くとか荒らしてやる、なんて人は居なかったのだ。

「もののけ」はちょっとだけ居たけど。

なぜハンドルに拘ったかというと、理由は二つある。一つは「ネットで実名を出せない…」にも出ている通りで、実名でネットに参加してはいけない、というようなケースは当時もあったのだ。

プログラミングの場合、特に仕事でそれをしている場合に、分からないことを教えて欲しいとか、意見を聞いてみたいということは、よくある。これを実名、会社名を付けてはまずい、というような現実がある。お客様からおまえの会社はそんなバグのあるプログラムを売っているのか、と言われたら困るというのだ。

どことは言わないがパソコン最大手のOSでさえbuffer overflowでホゲホゲみたいな初心者のようなバグがてんこもりなのが現実な訳で、ソフトウェアにバグがあるのは当たり前なのだが、エンドユーザーとかカスタマーは1ドットの抜けでもあったら液晶パネルを交換しろと煩いのが現実で、これはある意味仕方ないのだと思う。そういうギャップは解きようがない。

もう一つは非常に重要で、「ネットで実名を…」では一切触れられていないので、特に強調しておきたい。ネットには、おかしな人が大勢いるのだ。

大勢といっても、ネットに偏っているのではない。普通にいる。それが近所のようなコミュニティだと、殆どいない。1/100の確率でヘンな人がいたとして、100人の近所付き合いだと、1人いるか、いないか、という数である。だからそういうことは考える必要がない。

しかし、ネットというのは超巨大コミュニティである。だからヘンな人も大勢いる。どれ位巨大かというと、先に紹介したフォーラムだと数万人という参加者がいた。数万人の規模になると、1/1000程度でおかしな人がいると仮定すれば、その中に数十名のおかしな人がいることになる。実際にいた。感覚的には、1/100から1/1000の間だと思う。これは例えばその種の統計的な数字とも合致していたと思う。

その「ヘン」さが安全な方にシフトしていればいいのだが、中には予想できない位の過激な人がいる。ネットで喧嘩になった相手を実際に合って殺したとか、放火したとか、そこまで行った事件も何件かある。まあでもネットじゃなくてもそういう事件はたくさんあるが。

私の場合、実際に会って殺してやるから住所を教えろなんて言われた経験は殆どない。1度しかない。しかも実際には来なかった。だからこの種のトラブルがレアケースであるということは否定しない。しかし実際にあるのだ。ちなみにそういう違法なものではなく、書いた内容に対して訴えるという話も何度か経験している。

話が逸れたが、それで何がいいたいかというと、危険だから実名出すなとは言うのではない。それは自分のリスクだから好きにすればいい。言いたいのはそのことではない。実名というのは、意外と unique ではないのである。同姓同名の人は案外多い。名前だけだと人違いが多発する。

実際に、ネットで罵倒されたと思って人違いの相手を刺した、というような事件があったような気がするのだが、情報元が分からなくなってしまった。すみません。ただ、理屈としてはあるということは明白に理解していただけるだろう。当時は「中村明」という会員が何名いるかを示して論証した。ありがちな名前の人ほど、この種のリスクは増大する。

だから、パソコン通信時代に、次のことだけは念を入れて主張したのである。実名を出すのは構わない。それは本人の自由だ。その権利はある。重大な権利かどうかは知らないが、権利があるということは否定しない。

ただし、実名を出すのなら、人違いでとばっちりの被害者を絶対に出さないように、実名に添えて、住所と連絡先の電話番号は書いていただきたい。spam がわんさか来るような気もするが、できればメールアドレスも書いておくと連絡が取りやすいので便利だ。とにかく、完全に自分が自分であること、その個人であることを特定できるようにして欲しい。それが実名を書く人の最低限の責任だ。

もしそれを怠って、関係ない同姓同名の人が人違いで殺されたりしたら、それはあなたが間接的に加害者になったも同然である。絶対に同性同名がいない、というだけでは不十分だ。世の中には「似たような名前だから同じ人だ」と考える人だっているのである。なにしろ相手は「おかしな人」だ。常識は一切通用しません。

でもそういう危ない人が実在するのなら、住所や電話番号を書いたら、本当にそういう人が来てしまうではないか、危ないではないか、って? 当たり前だ。危ないに決まっている。

それがイヤなら実名を書かなければいい。そんなリスクも負えないのなら、実名を公開する資格はない。ハンドルで書けばいい。ハンドルというのは、uniqueness を確保するという意味も持っている。ハンドルが衝突したときは、変えることができるのだ。実名はそうはいかない。

パソコン通信時代のコミュニティは、参加者は数万人、見ることができる人はピーク時で数百万人だった。インターネットのサイトを見ることができる人は数十億人の規模である。

その数十億人がアクセスできる場所に自発的に実名を出すのなら、そこまで十分認識した上でやって欲しい。ネットで名前を出すというのは、会社の取引先に名刺を手渡すのとは訳が違う。どこかの国の過激な人が人違いでピンポイントのミサイル攻撃をしてからでは遅い。

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コメント

私も最近、ここ、全部は読んでいません。その点はお気遣いなく。(この部分はちょっと前の記事への返事です。)

さて、この記事、面白かったです。しかし、長いですね。:-P

> ただし、実名を出すのなら、人違いでとばっちりの被害者を絶対に出さないように、実名に添えて、住所と連絡先の電話番号は書いていただきたい。spam がわんさか来るような気もするが、できればメールアドレスも書いておくと連絡が取りやすいので便利だ。とにかく、完全に自分が自分であること、その個人であることを特定できるようにして欲しい。それが実名を書く人の最低限の責任だ。

ここがメインですよね。ここを読んで、初めてタイトルの意味がわかって、大いに納得しました。

ところで、新聞の投書欄などはどうなんでしょう。普通、市町村名まで載りますので、大学教員の場合、たぶん簡単に特定されてしまいます。

投稿: すのもの | 2009.10.11 17:52

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