書評: あいうえおの本、安野光雅著
最初に本を開けたらたまたま「る」のルリカケスのページが開いたので、をを、ルリカケスだ、と思ったのが発端なのだ。昨今の日本、どんな子供でもパンダやコアラは知っているがルリカケスは知らないだろうか、私は子供の頃に遊んでいたあいうえおの積み木の「る」がルリカケスだったので分かったのだと思うのだが。
この本も当然、あいうえお本である。パッと見た感じ、普通の絵本だ。よくある幼児向けの「あいうえお…」を描いた、ひらがなを覚えさせる類の絵本だ。という風に見えるのだが、本の裏には「幼児~おとなまで」と書いてある。安野氏の他の絵本と同じ、精緻な絵なので、そういう所が楽しめるからか。
とか思っていると騙される。
パッと見ると左ページに字、右ページにそれで始まるモノ、が描いてあるだけのように見えるのだが、絵の縁取りになっている絵の中にも、恐ろしくたくさん隠されている絵がある。例えば「か」のページの右には蚊取り線香の絵があって、蚊が倒れているのだが、その回りの絵には鴨やらカニやらカメレオンが出てくるし、最近は道端で見なくなったが、カラスノエンドウが出てきたりする。
このあたりまでは巻末にある「このほんに でてくるものの てびき」に書いてあるので、考えて分からなくなったら答えを見ればいいのだが、左のページの木で作った字の絵には「かすがい」※が打ってある。「か」だから「かすがい」なのだ。これはこの本のどこにも書いてない。「く」の木には釘が打ってあるし、「け」は削ってある。もしかしたらまだ私も気付いていない何かが隠されているかもしれない。
「わ」の絵を見ると輪投げなのだが、輪と輪がヘンに重なっていて、私の場合安野氏といえば算私語録のイメージが強いので、このあたりも面白くて成程とか思うのだが、ちゃんと輪投げの台にはワニの絵が描いてあるしワレているから芸が細かい。本気になるとかなり時間がかかってしまうので御注意を。
※ 最初「かしめ」と書いてしまったのだが後で見るとかすがいだったので訂正した。
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