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書評: ザ・キープ

ザ・キープ(上)(下)
F・ポール・ウィルソン著
広瀬順弘 訳
ISBN4-594-01331-7
ISBN4-595-01332-5
扶桑社ミステリー


ほんとのことなど五世紀もたてば影が薄くなって、いろんな憶測だけが大手を振って歩きはじめるんです。
(pp.41-42)

個人的には☆5個で満点の評価で5/5。まあ興味ないという人には別にお勧めするものではないですが、とにかく何でもいいから10冊紹介しろ、と言われたらこれは絶対に入れたい1冊。というか2冊ですか。

昔、「城塞」という題名で出版されていた時に読んだ。その後、探してもなかなか見つからなかったのが、「ザ・キープ」という名前に変わっていたとは知らなかった。映画化されているが、そちらは観たことがない。Webで評を見た感じでは、概して酷評が多いようだが、無理もないというか、これは原作が凄すぎるのである。

冒頭に引用したセリフの後は、そんなのは数年で起こるんだという話になっているのだが、細かいネタがちりばめられた上に構築されているのは、一言でいってしまえば吸血鬼系のホラーである。多少はナニな描写はあるけど、うーむ、R15指定? 読んでも構わないと思いますが、別に。

人生は結局病と不幸の連続――誰もが最後に敗れる戦いにすぎない。
(p.223)

こういうセリフが出てくるあたり、きゅーけつ系だなという感じがする訳で、ところで、この作品の主人公は誰、と言われたら意見が分かれるのだろうか、私としては断然マグダを推したい。ユダヤ人の娘でマンドリンが上手なこの女性が出てくるおかげで物語は一層混乱した世界に突入し、そして解決の糸口を見出す、という設定になっている訳で、吸血鬼はどうでもいいとは言わないが、いまいち影が薄い。というか影がないか、吸血鬼には?

ストーリーのベースは他の吸血鬼系の話と同様、吸血鬼がいて、そのハンターがいて、人間が絡む、というようなパターンである。ただ、この小説は、ナチスのSSが出てくる。そして、吸血鬼が殺す相手はナチスなのである。そのあたりの微妙なバランスがあって、最後にどうなるか、という所が興味津々という仕組みだ。あまり書くとネタバレになってしまうので止めとく。

ただ、これに続編が出ているというのは知らなかった。まあ「城塞」を読んだのは、もしかすると二十年ほど前のことなので、無理もない話なのだが、とりあえず続編を読むべきかどうか、迷っている。というか入手できるのか?

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コメント

 純粋な続編は三部作で扶桑社から出ていました。それぞれ上下巻に分かれてます。

 純粋な、と書いたのはポール・ウィルソンの他の作品のシリーズもこの三部作が続編となっているのです。東京創元社、早川書房で出されたもので、集めるのに苦労しました。あの頃ですらすでに本屋売りしかなかったですから、今はもう入手不可能かもしれません。翻訳されていないもう一つの作品も関係しています。当時は角川版城塞を読んだので、四つの出版社にまたがっていたわけですね。
 扶桑社では、何でも屋ジャックのシリーズ(名前合ってたか判らない)の新作が出ていましたが、それもその一つです。
 棄てていなければまだ持っているはずなので、発掘できたらご連絡します。

投稿: くろはた | 2005.01.17 15:40

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