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書評: 路地裏の大英帝国

路地裏の大英帝国 イギリス都市生活史(平凡社ライブラリー 381)

路地裏の大英帝国
イギリス都市文化史
角山榮・川北稔 編
平凡社
ISBN4-582-76381-2

メイド服について調査するために読んだのだが、先にいっておくが、この本、メイドの話は僅かしか出てこないので、それを期待して借りる人はあまりいないと思うが、念の為。

18~19世紀のイギリスの様子が分かる。恐ろしい貧富差があったようで、1861-1870年のリヴァプールの統計では、5歳未満のうちに死亡する率が52.6%だったなど、今では想像できないような史実が印象深い。ではなぜそんなに死亡率が高いのか、という分析をしているのだが、当時の貧民層の生活が凄まじいものであったことを想像させる。

で、メイド服の話。

19世紀初め頃から、メイド服が流行し始める。デフォーの「女中はその立場にふさわしい制服を着けているのが望ましい」という言葉が同書で紹介されているように、メイド服というのは、階級差別の一手段として出現したのですね。

基本的人権・平等という概念は今では当たり前のように使われるが、もともと、貴族という存在はそれに正反対に位置付けられるものであり、当時のイギリスの階級制度の細かさは、日本でいえば大相撲の番付のように厳格に序列を持った状態に細分化されていたように思える。メイドというのはその最下級に属するのであり、重労働の末に賃金もパンももらえない、というような話がいくらでもあったらしい。

同書では、階級の高い貴族に仕える使用人よりも、やや低い階級に仕える使用人の方が、雇用者側と被雇用者側の階級的な格差が少ないために、服装で明確に識別できるように、といった背景があると指摘しているが、これは一般論としても納得力のある説明だと思う。

ある意味気軽に読める一方で、学術的な知識を得るために読んでおくのも価値がある一冊ではないかと思われる。

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